「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」今後注目の若手監督3人がそれぞれの作品で描きたかったこと

2020.3.4

日本映画界の次世代を担う映画監督を発掘・育成し、日本映画野活性化を目指す「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」。これまでのプロジェクト参加作家の中からは、長編商業映画に監督デビューする作家が続々と誕生しており、今年度も川崎僚、島田欣征、山中瑶子の3人がそれぞれ短編映画「あなたみたいに、なりたくない。」、「Le Cerveau - セルヴォ -」、「魚座どうし」を完成させた。

この3作品はミッドランドスクエア シネマにて3月6日(金)〜3月12日(木)の期間限定で公開される。それに先駆け、3人の作家に話を聴いた。

―まずは、今回制作された作品のポイントを教えてください。
川崎「これまで自主映画を6年間制作しきました。その中で、”女性の生き方”ということをずっと考えていて、女性に共感してもらえる作品を目指してきました。今回は”婚活”をテーマにしています。私も主人公と同じ28歳のときに周りからの声もあり、婚活をしていました。でも、たくさんの方にお会いするうちに、自分が結婚を望んでいない人間だと気付き、開放された気持ちになりました。今は自由な選択ができる時代のはずなのに、何故か日本は固定概念に縛られている。女性だけでなく男性も、”こうしなければいけない”ということから解き放たれてほしいと思い、この作品を作りました」
島田「SF、サスペンス、フィルム・ノワールなどが好きなので、今回、それにチャレンジしたいと思いました。影響を受けた作品は「マトリックス」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などですね。心にモヤモヤしたものを抱えながらも選択をしなければいけないという状況は誰にでも起こり得ることです。どちらを選んでもスッキリしなかったり、同調圧力で自分の思う方を選べなかったり。でも、僕はその選択が自己中心的なものであっても、選んだ本人が幸せならそれで良いと思っているので、それをテーマにしました」
山中「以前から子どもをテーマにした作品を作りたいと思っていました。子どものころの記憶は大人になるにつれて、どんどん忘れていくし、それと同時に都合よく改ざんされていく。だから、早いうちに撮らなければと思いました。映画は起承転結がある作品が多いですが、そうでない作品もあって。自分がそういう作品を作ったらどうなるのかと、今作は”出会って終わる”という作品にしました」
―川崎監督の「あなたみたいに、なりたくない。」は観ていて、キャラクターのセリフがすっと入ってくるような作品です。
川崎「セリフは”そのキャラクターの言葉である”ということを意識して書いています。そして、書き終わったあと、必ず自分でキャラクターになりきって読んでみます。監督が読めないセリフは役者さんも読めないだろうし、どんな風にどんな感情で読めば良いのかを伝えられなければいけないので。自分も一緒に演じている感覚で調整するようにしています」
―島田監督の「Le Cerveau - セルヴォ -」は日常の中に突然SFが入り込んできて、アトラクションやゲームをしているような感覚を覚えました。
島田「一人称視点で撮影をしたりと、ギミックが多い作品です。物語の不穏感や不気味さ、ストーリーを立ち位置や演出で表現しています。観客としてサスペンスものを観るときは、次はどうなるんだろうというドキドキワクワク感が醍醐味ですよね。なので、観ている人に程よいストレスを与えられるように、そして一緒に観た人と答え合わせができる作品になるように意識しました」
―山中監督の「魚座どうし」は何気ないシーンがとてもリアルで人物たちの内面が自然に伝わってきました。
山中「実はリアルなものを撮りたいとはあまり意識していなくて。何がしたいかよりも何をしたくないかが明確なタイプなので、嫌なものをごまかさないようにしています。子役の撮影は大変だとよく言われますが、本作においては撮影中に困ることはなかったです。メインの2人が素直で変に擦れていない子だったことと、私が特別子ども好きというわけでなく、フラットな感じで接していたのが良かったのかもしれません」
―撮影で一番苦労したシーンはどこですか?
川崎「夜道で婚活相手に出会うシーンです。男性には全く悪気はないのですが、女性からするととても怖い出来事。どちらの気持ちも考えて作らなければいけないというシンプルに見えて、繊細なシーンです」
島田「クライマックスの会話です。どこまで説明臭くならないようにできるか。そして、どこまで語るのかという調整が難しかったです。なんでこんな設定にしちゃったんだろうと後悔することもありました(笑)。未経験の部分でもあったので、上手くいったのかまだ不安ではありますが、そこはチャレンジしてよかったなと思います。限られた撮影日数の中で全部撮りきらなければいけないのに、たくさんの要素をもりこんでしまったので、時間との戦いでもありました。この点に関してはベテランスタッフの方々にとても助けられました」
山中「大縄跳びのシーンです。本当は赤い帽子の子だけが引っかかるというのが理想で、当日引っかかる役のオーディションをしたりしました。でも、緊張していたり、テイクを重なるごとに疲労が溜まっていたりと、人間なので、しょうがないことではありますが、理想どおりにはなりませんでした」
―映画を撮りたいと思ったきっかけやルーツを教えてください。
川崎「小さい頃から映画が好きで、週末はよく家族で観ていました。はじめは監督ではなく脚本家になりたくて、プロットライターというあらすじを書く仕事をしていました。でも、先輩たちをみていると、そこから脚本家になれるひとはなかなかいない。どうしたら脚本家に近づけるのかを考えたとき、撮ってみるのもありかなと思ったんです。なにか今までと違うことをしてみることで突破口になるかもしれないと。実際撮ってみるとみんなで作り上げる感覚が楽しく、現場を知ってからは、脚本のしごとも上手く回るようになりました」
島田「高校卒業までは全く映像製作に携わったことはなく、大学も経済学部を目指していました。たまたま滑り止めで受験した映像関係の学校に進むことになり、映像製作の楽しさを実感しました。ミュージックビデオやCG制作の仕事をしていたのですが、映画の現場を目にしたときに、大の大人がお祭りのように撮っていて。それが素敵だなと思い、映画監督を目指すようになりました」
山中「うちは母が割と過保護で選択肢が限定されている家庭だったので、反発心から母が想定していない職業に就きたいと思っていて。ちょうど受験のタイミングで映画に興味をもったので、この道に進みました」
―今後はどんな作品を作ってみたいですか?
川崎「自分は以前もそうだったのですが、今、日本は行き過ぎたフェミニズムに傾倒していると感じています。なので、それを警告するような作品を作っていきたいです」
島田「具体的なことはまだ考えていませんが、チャレンジしたいジャンルはたくさんあります。今回の経験を生かしてのSFやサスペンスはもちろん、ドロップアウトした青春やヤンキーもの、コメディなども撮ってみたいです。今回はロジカルな作品だったので、人間的でエモーショナルな作品にも挑戦したいとも思っています」
山中「私はコロコロ気持ちが変わるタイプで、ストックもないので、今後どんな作品を作るかはわからないですが、海外で映画を撮ったり、合作などに挑戦してみたりしたいです」

「あなたみたいに、なりたくない。」

【STORY】

鈴木恵、28歳。地味なOL、彼氏ナシ。「このまま一生ひとりぼっちかも・・・」という焦りから結婚相談所に入会を決意する。ある日恵は、上司に、「独身で孤独な人」と陰口を叩かれている先輩OL、小山聡子(42)と見間違えられ、ショックをうける。焦りから、とにかく次から次へと婚活男子と会ってはみるが、今まで自分とちゃんと向き合ってこなかったこともあり、相手が見つけられないまま婚活に疲れ果てていく恵。そんな時、偶然街で出会った聡子先輩の家に招かれ、孤独だと思っていた先輩の意外な一面を知ることに……。

  • 監督・脚本 :川崎 僚
  • 出演:阿部純子、小島聖、鳥谷宏之、吉倉あおい、藤田真澄

「Le Cerveau - セルヴォ -」

【STORY】

前川早弥は生活苦の中、最愛の息子である蒼太を必死に育てていた。しかし、蒼太は病魔に冒されてしまう。奇病であるネオン症から蒼太を助けるための生体移植手術には、投薬を続けた早弥の身体が必要だった。大事な手術を控えたある夜、早弥は事故に遇い命の危機に。目が覚めると、見知らぬ研究室に森名トウマと名乗る少年が座っていた。そして、早弥は自分が大東アキという全く違う姿になっていることに気づく。次々と起こる異常事態に困惑しながらも、息子を救うべく彼女は真相に迫っていく……。

  • 監督・脚本・CG:島田欣征
  • 出演:田中沙依、藤崎絢己、南岐佐、八田浩司、上瀧昇一郎

「魚座どうし」

【STORY】

小学4年生のみどりはママと二人暮らし。パパは仕事で外国へ行ったきりほとんど帰ってこない。ママは心に穴が空いていて、自分ではそれを埋められないことをみどりはわかっている。学校へ行けば友達もいるけど、なんだか満たされない。担任の柳先生は、クラスで理想の王国を築こうと今日も張り切ってる。同じく小学4年生の風太の家にもお父さんは不在。柔和なお母さんは宗教に熱心で、お姉ちゃんは中学生になってからやっと、反抗し始めた。起きたら何もかも大丈夫になっていますように、と願いながら子どもたちは今日も眠りにつく。

  • 監督・脚本 :山中瑶子
  • 出演:根本真陽、外川 燎、山田キヌヲ、伊東沙保、カトウシンスケ

ndjc公式サイト:http://www.vipo-ndjc.jp

ミッドランドスクエア シネマにて3月6日(金)〜3月12日(木)、期間限定公開
3月7日(土)上映後に監督ほかによる舞台挨拶

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